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相続対策

相続人に未成年者・認知症の方・行方不明者がいる場合の遺産分割

遺産分割協議は、相続人全員によって行わなければなりません。

未成年者や認知症の方、行方不明者も、当然相続人としての権利を有します。

したがって、相続人に未成年者や認知症の方、行方不明者がいた場合に、その方々を参加させずに行われた遺産分割協議は無効となります。

遺産分割協議書には、相続人全員の署名と捺印が必要になりますが、未成年者・認知症の方は判断能力が乏しい可能性があるとして、これを行うことができません。

また、不在者がいる場合においても、勝手に署名や実印を捺印することはできません。

では、このような場合に遺産分割協議はどのようにしたらよいのでしょうか?

今回のコラムでは、相続人に未成年者・認知症の方・行方不明者がいる場合の遺産分割についてみていきたいと思います。

 

 

相続人に未成年者がいる場合

本人が未成年者の場合、通常は親権者である親が法定代理人になります。しかし、相続に関しては親子が揃って相続人となるケースは少なくありません。

このような場合、親子間の利益が相反することになるため、親が子の代理人となって遺産分割協議をする事ができません。

 

例えば、父が亡くなり、その相続人が母(45歳)、長男(21歳)、長女(17歳)というケースで見てみましょう。

未成年者である長女の母親は、長女の代理人として遺産分割協議を行うことはできません。

なぜなら、母が長女の相続財産の取り分を減らしてその分を自分の取り分として多くもらう可能性があるからです。

このケースのように、母がその子との間でお互いに利益が相反する行為を行うときは、親に代わって子の代理人となる「特別代理人」の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。

特別代理人が選任されると、その特別代理人が母と長男との3人で遺産分割協議を行うことになります。

この特別代理人は、あくまで遺産分割協議における未成年者の代理人であるため、遺産分割協議が終われば基本的にはその任務は終了となります。

 

認知症等の相続人がいる場合

相続人の中に認知症の方がいる場合、その認知症の方に代わって遺産分割協議を行う「成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

成年後見人が選任されると、その成年後見人が認知症の方に代わり、他の相続人と遺産分割協議を行うことになります。

ただし注意しなければならないことがあります。

成年後見人は、遺産分割協議をするためだけの代理人ではなく、遺産分割協議終了後も特別な事情がない限り、原則として被後見人が亡くなるまでその後見人としての職務が続くことになります。

したがって、選任された成年後見人は、被後見人(認知症の方などのことを言います)の財産管理・身上監護を継続的に行っていくことになります。

成年後見人は遺産分割協議のみの代理人と考え、遺産分割協議が終了すれば成年後見人の関与はなくなると考えている方が少なくありません。

成年後見人の選任には注意が必要です。

 

 

相続人に行方不明者がいる場合

相続人の中に行方不明者がいる場合、その者と遺産分割協議を行うことは不可能です。

この場合は、家庭裁判所に対して行方不明者の代理人である「不在者財産管理人」選任の手続きをとることになります。